空が青く、雲が白いというのはだれでも当たり前のことだろう。しかし、それは
なぜかと聞かれると、イメージできない人も多いのではないだろうか。
このシリーズでは、そんな誰もが抱く疑問について解説していこう。
「モノ」はどうやってみえるのか?
そもそも、物の色が見えるというのはどういう現象なのだろうか?

まず、外界から光はたいてい2通りの方法で目に入ってくる。
①光源から直接目に届くパターン
太陽からの光やLEDの電灯、パソコンの画面を見たりするのがこれにあたる。太陽光からの光は強力で、地球に降り注ぐ光のうち最も強い。
②光源からの光が物体に当たり、そこから跳ね返ったものが目に届くパターン
草が緑色に見えるのがこれにあたる。空も雲も自ら光っているのではなく、こちらのパターンに当てはまる。つまり、太陽からやってきた光が、「何か」に当たって跳ね返ってきたものを見ているのだ。
これら2つの方法でやってきた光を、人は目でとらえる。目に入った光は、眼球の角膜・水晶体を経て、網膜に映る。そして、この映った情報が、視神経を通じて脳に伝達されることで、人は物を見ていると認識することができるのだ。
色と太陽放射
光は波としての性質を持っており、光の波長の違いを、人は色として感じとっている。
380nmから770nmの間の波長の光を「可視光」と呼び、人が目で見ることのできる光だ。赤は波長の長い光に、青は波長の短い光に対応している。赤より長い波長の光を「赤外線」、青より短い波長の光を「紫外線」と呼ぶ。
太陽の光は一色ではなく、さまざまな色の光が合わさって白く見えている。つまり、様々な波長の光が混ざっているということだ。太陽からやってくる光はどのようにして決定されるのだろうか。

物理の世界では「光」が放出されることを「放射」という。実は、この世のありとあらゆるものはその温度に応じた種類の光を放射している。このとき放射される光の波長は1つだけではなく、無数の波長の光が重なり合った状態となっている。
私たちの体からは約36℃に対応する光が放射されているが、この光の波長は赤外線なので目で見ることはできない。一方、太陽は約5800K(=5500℃)と非常に高温だ。この場合は、上の図の赤い線に示すように、だいたい300nmから3000nmくらいの波長の光が交じり合って放射されている。この太陽から発せられる放射は、その名の通り「太陽放射」と呼ばれている。
太陽放射は地球へ到達、地上近くに届くまでに、大気中に存在する物質により跳ね返され、その一部は宇宙空間へと帰っていく。そのため、実際に地上に届く放射量は太陽放射量よりも少し小さくなっている。特に生命にとって有害な紫外線は、ほとんど地上に届かないことが上の図からもわかると思う。
以上のことを踏まえると、
A) 「空」は、太陽放射を地上へ向けて跳ね返しており、その光の波長は380nmくらいで青く見える。
B) 「雲」は、太陽放射を地上へ向けて跳ね返しており、その光はいろいろな波長の光が混ざって白く見える。
ということになる。ここで、A・Bどちらも同じく太陽放射が跳ね返ってきた結果なのだが、なぜ跳ね返ってくる光の波長が異なるのだろうか?
この跳ね返りは、「反射」とは異なる物理的イメージの現象で、「散乱」と呼ばれている。次回は、散乱とは一体どんな現象なのか、空気分子や雲粒子がどのようにして太陽放射を「散乱」するのか見ていこう。