空はなぜ青いのか?雲はなぜ白いのか?#2 散乱とは?―光と粒子の相互作用―

光はどのようにして跳ね返るか?

光を曲げたり、跳ね返らせたりする現象は3つ(反射・屈折・散乱)に分けることができる。

反射・・・入射光が、異なる物質同士の境目で、鏡のように跳ね返ること。

屈折・・・入射光が、異なる物質同士の境目を超えて、もう一方の物質の中に入る際、光の進行方向が変わること。

散乱・・・入射光が小さい粒子にあたった時、入ってきた光が様々な角度の方向へと進路を変えること。

空の青さと雲の白さは、太陽光の散乱によって説明できる。(ちなみに、反射の影響はほとんどない)

散乱のイメージは反射や屈折と比べるとイメージしにくいものである。ここから、散乱の物理的なイメージについて説明していこう。

光は「電磁波」―電磁波とは?

まず、光とは物理的にどのような現象なのか説明しよう。光は「電磁波」の一種であり、その名の通り「波」としての性質をもっている。ここで、電磁波を理解するのに必要な「電場」と「磁場」という概念について紹介しよう。

電場とは?

物理学では、「電気」のことを「電荷」と呼ぶ。電気にはプラスとマイナスがあることはみな知っていると思うが、電荷にも正電荷(+)と負電荷(ー)がある。

ここで、異なる符号(+とー)の電荷同士の間には、引き合う力(引力)がかかる。

一方、同じ符号(+と+、またはーとー)の電荷同士の間には、反発しあう力(斥力)がかかる。

このように、電荷同士に働く力を「静電気力(クーロン力)」と呼ぶ。静電気力は離れたところにも働く、「遠隔力」の一つである。遠隔力にはこのほかに、「重力」や「磁力」がある。これに対して、物を持ち上げたりする時のように、物体に直接触れているときにかかる力を「接触力」という。

普段我々が生活しているときには、遠隔力を実感することはあまりないため、静電気力がどのように働いているのかイメージしづらい。「離れたところに力がかかる」と聞くと魔法のようなイメージを持つのではないだろうか。

そこで、静電気力も、接触力と同じように直接物体に力が加わっていると考えることができるように、「電場」という概念が導入された。

上の図のように、電荷が存在するとき、その周りには「電気的な場」が発生するとしよう。

ここで、「場」の中に他の電荷を新たに配置すると、その新たに配置した電荷は「場」から力を受け、この力が静電気力であるという風に考える。

すると、静電気力を、「電荷が「場」に接触することで発生する力」ととらえることができ、接触力と同様のものとして扱うことができる。この場のことを「電場」と呼ぶ。

磁場とは?

磁石のN極とS極の間には引力が働き、N極同士・S極同士には斥力がかかる。ここで、電荷の時と同じように、N極をプラス・S極をマイナスとみなして、磁気を帯びているもののことを「磁荷」と呼ぼう。

この時にも、異符号の磁荷の間には引力が働き、同じ符号の磁荷同士には斥力が働く。このとき働く力は「磁力」と呼ばれ、これは遠隔力である。

静電気力の時と同じように、ある磁荷の周りには「磁気的な場」すなわち「磁場」が発生し、この「磁場」の中に存在する別の磁荷は、「磁場」からの力が働くと考えるのである。

電磁波とは?

「電磁波」つまり我々が見ている「光」というのは、上で紹介した「電場」と「磁場」が、互いに振動するように変化しながら空間中を伝播していく物理現象のことである。図のように、電場と磁場は直交していて、お互いに関わり合いながら進んでいく。

電場と磁場の振動する周期は同じで、振動1回分で進む長さのことを「波長」と呼んでいる。

散乱の物理的なイメージ

ある波長の電磁波が、横一列になりながら、粒子に向かって進んできている場面を考えよう。ここで、電磁波の中でも電場の変動に注目して、散乱という現象に説明する。

この横一列の電磁波は、平面波と呼ばれる。粒子は最初の状態ではプラスでもマイナスでもなく、電荷をもっていないとしよう。

プラス・マイナスに波打った電場Eの平面波が粒子に差し掛かると、粒子の中でとある変化が起こる。

光がやってくることで周りのプラス電荷が強くなっている場所は、それに応答して粒子はマイナスの電荷をもつようになる。そして反対に、周りの電荷が弱くなっている場所は、それに応答して粒子はプラスの電荷をもつようになる。

結果、粒子の中にプラスとマイナスの電荷が生じることになる。このとき、粒子内に平面波のもつ電場Eとはまた別の電場Epが生まれる。

そして今度は、粒子内部の電荷の偏り(電場Ep)が、粒子の周りに新たな電荷の偏り(電場Es)を生み出すことになる。この電場Esに対応するのが散乱光である。

粒子の周りには「入射光の電場E」と「散乱光の電場Es」、「粒子中の電場Ep」が存在することになる。ここで、粒子の表面の内側と外側で電場は同じ値にならなくてはいけないので、「E+Es=Ep」という条件を満たさなければならない。この条件の下で式を解くと、散乱光がどのような性質(方向・波長)を持つ光なのかを求めることができる。

ここで、Eは入射光の波長、Epは粒子の大きさによって振る舞いが変わるため、Es、つまり散乱光は「入射光の波長」と「粒子の大きさ」に特徴的な分布となるのである。

以上が散乱という物理現象の直感的なイメージだ。